ピットイン


 「だいじょうぶですか?」

 私の後を追いかけるようにして治療室に入ってきた佐藤直史先生は、そうたずねられました。その笑顔の中には、いつもより少し長く私を見ようとされているまなざしがあります。ちょうどカメラの広角レンズで、私の身体全体を捉えようとされている感じに似ているかもしれません。まだ、私が治療ベッドに横たわる前、ちょうどこれから治療用ローブに着替えようとしていた時のことです。すでに、佐藤先生の問診が始まっているのを感じました。

 「とても疲れていますね」

 佐藤先生は、ベッドの上の仰向けになった私にそう声をかけ、足、腹、腕、肩にあっと言う間に鍼を打ち、最後に今度はそっと置くように顔のツボにも打たれました。ちょうど、私の目を囲むように、眉の上、目じりの横、目の下、そして目頭の側だったと思います。

 顔からすっと緊張が抜けてゆくのを感じました。抜けて初めて、そこに疲れがあったことを知りました。

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◎陽白(ようはく)
・ 眉の中央から上に指一本分ほどあがったところ
・ 頭や顔、目などの症状に効果があります。特に目の上の痛み、顔の痛みなどを和らげるのに効果的。

◎ 瞳子髎(どうしりょう)
・ 目のかたわらの骨が盛り上がっているところにくぼにみあるツボ
・ 頭痛や目の疲れ、目のかゆみ、充血などの疾患に良く効きます。

◎ 四白(しはく)
・ 瞳の真下にある骨のくぼみから指一本分ほど下がったところ
・ 頭痛やめまい、疲れ目によく効きます。

◎睛明(せいめい)
・ 目頭にある骨のくぼみ
・ かすみ目や目の充血など


 渋谷鍼灸治療院をレーシングカーのピットのように感じることがあります。走り続けて、疲れた身体で治療院の走りこみ。ベッドの上で佐藤先生の的確で素早い治療を受け、またコースにもどり走り出す。ここがあるから、安心でき、少々無理をしても思い切り走り続けることができる。ここは私にとってそんなところです。
 
 
 
(文/青樹洋文 ただいま治療中…)

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