トレーナー池川亜矢子先生とのコラボレーション~鍼灸治療で体調が良くなり、次は自ら動こうとされている患者さんへ

■局部的なことを気にせず、体幹から身体を動かしていく

 日本全国のスポーツトレーナーの指導者であり、またプライベート・トレーナーとしても数々の経験をお持ちの池川亜矢子先生と、コラボレーションを始めました。開始したのは2019年後半ですから、約1年半が経ちました。

 トレーニング・メニューはすべて池川先生の見立てで進めていただいています。トレーニングを始める前に私から池川先生にお話したのは、身体の痛い部分や動かない部分についてだけ。私自身が立てた証や診断結果にについては一切お伝えしませんでした。

 トレーニングのテーマは「局部的なことを気にせず、体幹から身体を動かしていこう」というもの。ストレッチや運動器具などを使ったエクササイズを行っています。

 池川先生のトレーニングを受け始めてすぐに、身体の感覚が蘇ったように感じました。筋力の強弱はあるにせよ、動かなかったところが動くようになったのです。

 感覚が戻ってくると、今度はその動きを反復したくなりました。トレーニング後も、自宅で積極的に身体を動かしたり、ストレッチをしてみたくなるのです。

 鍼灸治療でも、気血のバランスが整い体調が良くなり始めると、患者さん自らが動こうとする努力が見えてくることがあります。そのタイミングで、池川先生によるトレーニングを体験することは、とても効果的かもしれません。

■自動運動を誘う「補法(ほほう)」の鍼と池川先生のトレーニング

 鍼を打つと、心臓の「どん、どん、どん」という拍動が鍼に伝わり、それが刺激になります。

 これは極端な例ですが、心臓の拍動のような柔らかい刺激を鍼に伝える治療法を「補法(ほほう)」の鍼と言います。

 これとは逆に、針を打って施術師がぐいぐいと刺激を与える。これを「瀉法(しゃほう)」の鍼と言います。

 「補法」は、正気(せいき)、つまり正常な気を補う治療。それに対して「瀉法」は、邪気(じゃき)、つまり病気の原因になるような、悪い気を散らす治療です。

 虚(きょ)している人には補(ほ)し実している人には瀉(しゃ)す。患者さんの「虚実」によって、この刺激の変化させ、治療の内容を変えます。

 他方、「補法」も「瀉法」どちらも刺激を与えることには変わりありません。でも、それが自分の心臓の拍動という内部的な刺激なのか、それとも外部から与えられた刺激なのかという違いがあります。

 例えば、脳などを患っている患者さんには、指頭部などにお灸をすることがあります。これは指先へのお灸で脳に刺激を入れているのです。でも、その刺激を受けて実際に身体(脳)を動かすのは患者さん自身なのです。

 このような自動(自分で動かす)運動は、とても良いリハビリになります。自らの脳が働き、自らの脳が指示を出すようになるからです。

 池川先生のトレーニングも、この自動運動を行うきっかけとして、とても良いと思っています。

■「できないことがわかることも楽しい」池川先生のエクササイズ

 池川先生は以前トレーナー向けの専門誌のインタビューに答えて、トレーナーが心得ておくべき技術について語っています。それは「運動そのものを楽しむ」段階まで生徒さんを導く技術についてです。

 「頭で楽しむのではなく、身体が楽しいという感覚を知ってもらうこと。手、体幹、足が上手く連動し、タイミングがあって飛べたときや、気持ちよく身体を伸ばすことができたとき、身体そのものが楽しいと感じるのです」(池川先生、インタビュー記事より)

 運動不足になると、多くの人が手、体幹、脚が連動する動きができなくなります。そのような人にエクササイズを楽しんでもらうためには、「自分の身体に対する感覚を高めてもらうこと」だと池川先生は言います。

 池川先生は運動不足の人にはできないと思われる動きを、あえてトレーニングの中に取り入れるそうです。生徒さんにはあらかじめ、「むずかしいけど、やってみてください」と伝えて実施してもらう。そして実施後には、「できなくても身体が頑張っているんだと思って、笑って自分を許してあげてくださいね」などといった言葉をかけるそうです。

 こうしたアプローチをする理由は、「できないことがわかることも楽しい」ということを、生徒さんに気づいて欲しいからだそうです。手と脚が同時に動いてしまったり、思う方向に身体が動かなかったり、「わかっているのにできない」ことを発見できた人には、その発見は楽しみに変わり、エクササイズの継続につながるそうです。

 「気づく」こと、「楽しい」と感じること、これも脳への刺激です。

■近い将来みなさんと一緒に楽しくエクササイズを!

 池川先生とのトレーニングを通して私が気づいたこと。

 まず、以前は靴ひもを結ぶ姿勢ができなかったのですが、できるようになりました。また、腕と肩と背骨の動きが連動してきているのを感じます。他方、「まだ動かすのはこわい」とも感じています。この「こわい」という感覚も「気づき」の一つです。

 足の指がなんとなくですが、開けるようになってきました。正座の姿勢をとるのは今一つですが、骨盤のバランスはよくなってきました。

 心はだいぶ高ぶってきていますが、身体が高ぶらないことにも気がついてます。

 こんな様々な気づきも、そのままお伝えしながら、池川先生とのコラボレーションを継続しています。

 近い将来みなさんと一緒に楽しくエクササイズができる日が来ると思います。どうぞご期待ください。


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