鍼灸治療は、全身に300以上存在するツボ一つ一つに鍼を打ち、その響に対する脳からの正しい反応を時間をかけて引き出して行く、身体へのとても丁寧なアプローチです。
佐藤先生は、この鍼灸治療の”丁寧さ”について、こんな説明をされました。
「ゆっくりと鍼を打つことが丁寧な治療ということではないのです。それぞれの患者さんのリズムにあった鍼の打ち方をする。もしくは、その先生自身が自分のリズムを持っていることが大切なのです。」(佐藤先生)
そして、佐藤先生は、その両方の治療方法を行われるとの事。
「リズムのない人にはリズムをつけてあげる。リズムのあるという患者さんでも、早いリズム、遅いリズムがあるので、それぞれのリズムに合わせます。
しかし、それがその方の本当のリズムでなければ、本来にリズムに戻して行きます。」(佐藤先生)
では、その丁寧さに欠ける治療を受けると、身体はどうなるのでしょうか。
「リズムがくるい、脳が迷い始め、精神的に不安になります。」
そう言うと、佐藤先生は、毎週レッスンに通われているというアカペラの楽譜をカバンから取り出し、「涙そうそう」の最初の八小節を歌いました。一つ一つの音符のリズムを意識された歌い方です。
「メロディーで流してしまうのではなくて、この一つ一つの音符が必要なのです。きちっとした割舌の中で、きちっとしたリズムがあって、きちっとしたメロディーがそこにあって、それらがすべて一緒になって音楽になる。鍼灸治療も同じだと思います」
「そうそう」「ああ、これだ!」と、身体全身が反応して行くミュージシャンの心地よい唄。私は、佐藤先生の治療にそれと同じものを感じます。
佐藤先生に治療をしていただいて、3ヶ月がたちました。運動をしてみたくなり、先日区民プールに行きました。なんと泳ぐのは6年ぶり。私の身体の中に、小気味良いリズムが鳴り始めているのを感じています。
(文/青樹洋文 ただいま治療中…)