アスリートのメンタルヘルスと鍼灸治療

◎心の健康状態調整のための鍼灸

 「だいぶ身体が出来上がってきましたね」 

 佐藤院長の明るい声が治療院に響きます。患者さんは、胸板が厚くラグビー選手のようにがっしりとした体型の男性です。院長の呼びかけに嬉しそうに受け答えをしています。

 「今にもグランドに駆け出していきそうじゃないですか」

 サポーターの歓声を浴びながら、全力でグランドに駆け出していくアスリート。佐藤院長の頭の中には、患者さんのそんな姿が見えていたのかもしれません。

 渋谷鍼灸治療院には、ラグビー、野球、サッカー、アイスホッケー、フィギュア、柔道などのスポーツ選手や、ダンサー等、様々なアスリートが訪れます。キャンプ前、キャンプ後、試合前、試合後と訪れるタイミングも様々です。

 来院の目的も様々。ケガの治療はもちろんですが、多くのアスリートはメンタルヘルス(心の健康状態)の調整のために鍼灸を利用していると、佐藤院長は見ています。

 佐藤院長は、アスリートの心と身体の健康について、次のように説明します。

「アスリートには、その時のモチベーションと『これをやりきるんだ』という気持ちがあれば、自ずと自信が湧いてくるものです。でも、そのモチベーションが中途半端だったり、『何か違うんじゃないか』というような迷いがある時はだめですね。『不安』もあると思いますが、不安というのは結局『迷い』なんです」

 そして、その迷いの原因は痛みだと佐藤院長は言います。

痛い時って迷うじゃないですか。でも、痛みが消えると楽になる。単純に、体調が良くなると迷わなくなるんです」

 

◎1回の治療の中に通常の4回分の内容

 鍼灸には本治法(ほんちほう)標治法(ひょうちほう)があります。アスリートに限らず、一般の患者さんにも本治法が佐藤院長の治療の基準となっています。

 本治法により、生命力が強化され、病を治す力(自然治癒力)が回復し、根本から治癒していきます。 他方、標治法とは、症状の現れている局所に対して直接施術を施す治療法です。

 簡単に言えば、右肩が痛いと訴える患者さんの右肩だけに鍼を打つのが漂治法。それに対して、身体全体の気血を整えるのが本治法です。

 「本治法をすることで身体が安定していきます。安定した上で、まだ気になるところ、痛いところを患者さんに聞いていきます。また、最近はどういうトレーニングをしていて、トレーニングをした時の身体の状態はどうなのか。いついつまでに自分をどうしたいのか。それらを聞いた上で、それに合わせて治療のスケジュールを作ります」

 佐藤院長の鍼灸治療は4回で1クール、それを4クールというのが一つのスタイルとのこと。それはアスリートの治療だけでなく、一般の患者さんの治療も変わりません。

1回の治療の中に通常の4回分くらいの内容が入っています。それを4クールですから、4×4で16回。僕が4回見ると16回診ているのと同じくらいの内容になります

 そこまでの集中力を持って行われる佐藤院長の治療に、多くの患者さんが高い価値を見出しています。

 

◎患者さんが感じる可能性とそれを引き出す鍼灸師の役目

 また、忙しいスケジュールの中、渋谷鍼灸治療院に通い続ける患者さんは、患者さん自身の中に今以上の可能性を感じているからだと、佐藤院長は言います。

自分に期待したいということじゃないですか。そして、それを引き出したり、気血を整えたり、身体の方向をつけたりするといいうことが、僕たち鍼灸師の役目なんです

 佐藤院長は、患者さんであるアスリートやダンサーが実際に出場、出演する試合や公演に、よく足を運びます。

「アスリートの方の体調や身体の形を観てきているわけですから、こんな感じでできているのだろうなというイメージは持っています。でも、実際にそのレベルでパフォーマンスする患者さんの姿をみると、やはり凄いなと思います。また、何かをかばって痛そうな動きをしていることに気づくこともあります」

 渋谷鍼灸治療院の治療は治療室で終わりではありません。

「後のことはわかっていないと、鍼灸はできないですから」

 治療のその先へ。渋谷鍼灸治療院は、前向きに頑張る全ての人の傍らでいつもサポートしています。


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