もっと自分自身の身体と向き合おう、身体の状態を知ろうと試みるものの、なかなかできずにいます。私にとって、それは自分自身の心について知ろうとすることと同じくらい、難しいことのようにも感じられます。かつて、パスカルが言った「心には理性では分からない理屈がある」ならぬ、「身体には心では気づけない理屈がある」、といったところでしょうか。
自分の身体を客観的に捉えるために、何かわかりやすい方法はないでしょうか。佐藤先生は、人間の身体を自動車のパーツに例えて説明をしてくれました。
「例えば、心臓は車のエンジン。そして、その能力は排気量に例えることができるでしょう。馬が一万馬力(10,000cc)ですから、人間は360ccから4500ccくらい。」
「胃はクラッチ。クラッチには、一速から六速ぐらいまでのギアがあります。胃は平滑筋という筋肉でできていて、このギアと同じような働きをしているのです。例えば、この筋肉が動く(漸増運動)ことで、胃のクラッチが滑らかに働くことができます。この筋肉が硬くなると、エンジンのギアが上がらずロー回転している状態と同じで、胃も重くなります。逆に、胃のギアが最速の状態になると、漸増運動が強くなり胃酸の分泌も活発になりますが、この状態があまり長く続くと胃酸過多、つまりギアシフトレバーの油圧が上がりすぎオイル漏れ起こしている状態に似ています。」
「会社員の昇進の話しで言うと、例えば、エンジンが小さい人を部長にすることは大変なことなんです。課長のポジションが最適だったのに、360ccしかないエンジンの車に4500ccの走りをさせようとしているのと同じ。でも、これは実社会でよく起きていることで、これが原因で身体を壊す方がたくさんいらっしゃいます。昇進によって得た昇給分がそのまま医療費になってしまっている人もいるかもしれません。そして、このエンジンの馬力数を上げることは夢と同じ。とても難しいことなんです。」
しかし、「夢を叶えたい」と思うのも人間。佐藤先生は、日々夢を抱えたたくさんの人々と治療院ベッドの上で向き合っているためか、このこともよくお分かりになっています。
ところで、夢を達成した時よりも、その夢に向かって走っていた頃の方が、楽しかったと思うことがあります。ドライブで目的地に着いた時よりも、様々な風景の中を走り抜ける車の運転自体の方が面白いというのに似ているのかもしれません。
鍼灸治療は、この快適なドライブのためのサポートしてくれているようです。ドライブの目的地は夢。
さて、あなたの車の調子はいかがですか? そろそろ定期点検をされてみてはいかがでしょうか。
(文/青樹洋文 ただいま治療中…)