たくましくも上品な腕の筋肉と繊細な指先のセンサー

 

 (ひじから手首にかけての筋肉が美しい)――

 佐藤先生の腕を見て、そう思いました。柔道家のような、太くてたくましい腕にも見えますが、単に筋肉隆々であるとか、野生的、男性的な腕というのとも異なります。その力強い外観とは対照的に、上品な繊細さと優しさを感じるのです。

 たとえば、脈診のために佐藤先生に腕を取られと、一瞬にして自分の血管が佐藤先生の指とつながり、自分の血液が佐藤先生の腕の中に流れ込んでいるような不思議な感覚にとらわれることがあります。佐藤先生の指のセンサーの感度の高さが、私にそう感じさせるのかもしれません。

 渋谷鍼灸治療院のホームページには、その佐藤先生の腕の写真が使われています。30年間、一万人を超える患者さんを施術してきた腕です。

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■指先に自分の意識の全てが集中する陶芸家――「自分自身が小さくなって、茶碗の内側を走っているよう」

 このような腕の形をした人を、私はあまり知りません。

 いいえ、そう言えば、知人の陶芸家の腕が、同じような形をしていたことを思い出しました。

 その陶芸家は30年前に南足柄で築窯し、アトリエの裏庭では自ら粘土を育て、作陶活動をおこなっています。蹴轆轤(けろくろ)を裸足でまわし、土に微妙な揺らぎを伝えながら、作品を作り上げます。糸引きの茶碗を轆轤でひいているときの感覚を、彼は次のように説明したことがあります。

 「まるで、自分自身が小さくなって、茶碗の内側を走っているようだ」

 たくましく、上品な腕の筋肉とつながる指の先に、陶芸家の作品作りの意識が集中することで、そのように感じているのかもしれません。

■指先のセンサーが、鍼の先のセンサーにつながり、氣を投げ入れる

 はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得して、現在渋谷区内で医療に携わる若手の先生たちに、佐藤先生がワークショップを行ったときのことです。先生は、脈診に絡み、指の役割について解説しました。

 「まず親指は、他の4本の指を包み、一緒に物を掴む機能があります。人差し指は、ものを掴もうとしたとき、その方向をつける作用をします。中指は物を持った時に、こぼさないようにバランスをとる。小指は物を持ったときに圧がかかる。薬指ではなくて小指から圧がかかります。その小指を支えているのが薬指です。基本的に小指と親指で圧をかけ物を持ち、これを人差し指で方向を決め移動させます。それが指の機能。指がない人は他の指を代用して使う場合もありますが、施術にはこの指を全部使うことが必要です」

 私は今まで、こんな風に自分の指の働きを個別に、かつ具体的に考えてみたことはありませんでした。佐藤先生の説明を聞きながら、自分の一本一本指を動かしていると、それぞれがつながる腕の筋肉に伝わり、手首からひじの間で動いていることを、いまさらのように感じました。

 「感覚は指頭部の前部に出てきます。それが人を触るときの感覚になってきます。指頭部と指先とは違いますよ。鍼のときはこのセンサーが問題になってくる。鍼を打つと、もうその先は見ることはできない。この時に、指先のセンサーが、鍼の先のセンサーにつながります。鍼の氣を投げ入れるときの感覚です」

 佐藤先生の腕から、指先を通り、鍼の先を通って投げ込まれたエネルギーを、私の脳が受け取ります。

 果たして、私はこの感覚をどこまで言葉で伝えることが出来ているのでしょうか。私の表現力では物足りないと感じた方は、ぜひ一度ご予約の上、渋谷鍼灸治療院に足をお運びください。

(文/青樹洋文 ただいま治療中…)

 


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