1)鍼灸本来の治療ができる鍼灸師を育てる『鍼灸専門治療院』

■渋谷鍼灸治療院院長・佐藤直史先生インタビュー(2)
~ 次世代の鍼灸師に託す未来を創る

――症状ではなく人間全体を見る

 渋谷鍼灸治療院の院長である佐藤直史先生にお話しをお聞きしています。「気持ちの上では引退宣言」をされた佐藤先生の言葉は、次世代の鍼灸師に託す未来を創るために、自身の体験から漢方理論まで多岐にわたりました。

目次

  1. 「気持ちの上では」引退宣言に込められた決意表明
  2. 五感を開き時間軸を遡り患者さんと向き合う~証を立てる
  3. 「症状」を診るのではなく「人間」を見るということ
  4. 「平成 28 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 

     ちなみに日本国内店舗数第一位のコンビニエンスストア、セブンイレブンの店舗数は平成28年度で19,422店舗とのこと。つまり数字の上では、セブンイレブンの店舗よりも「はり及びきゅうを行う施術所」のほうが、45%余りも多いことになります。

     しかし、「町中でセブンイレブン以上に鍼灸の施術所を目にする」というような経験がある方は、あまりいらっしゃらないのではないでしょうか。

     佐藤先生は、次のような見方を示しました。

     「鍼灸専門の治療院は、開業された先生が一人で施術をされているところが多い。治療師の先生の『一人体制』です。当院(渋谷鍼灸治療院)のように、「治療師と院長」という複数体制で行っている鍼灸専門治療院は今ほとんどありません。残念ながら今後そのような治療院が新たに出てくる可能性は少ないだろうと思います」

     佐藤先生は続けます。「では、この『一人体制』、いわゆる『一匹狼』のスタイルの治療師に、今後患者さんがついていくことになるのでしょうか?

     複数の治療師によって施術している治療院もありますが、上に立つ先生と同じように、師事する治療師の先生方も高齢化しています。上の先生が亡くなられて、当院に回って来られる患者さんもいらっしゃいます。

     他方、学校で勉強をされて新たに鍼灸師の免許を取得された先生方は、ほとんどが病院やマッサージ店等に勤めるようです。

     つまり、鍼灸本来の治療ができる治療師を、鍼灸の『業界』のなかで育てることができていないのです。治療師を育てるのであれば、責任を持って診療できる『鍼灸専門治療院』という環境を、時間を掛けて体系付けていかなければなりません」と、佐藤先生は訴えます。

    ■「今、渋谷鍼灸治療院にはいい若い先生たちがいる」

     佐藤先生は年齢ともに、長時間連続して複数の患者さんを治療することが難しくなってきているとのことです。また、患者さんへの施術によって先生の全身の骨の屈曲、変形が始まっていることも明かしました。

     「だからと言って、何ができなくなるわけではないのですが」と笑顔で話す佐藤先生は、再び自ら記した並列年表に視線を落としました。

     「自分だけのことであれば、僕も『一人治療院』になればいいのです。でも、自分だけのことではない気がするのです」と語りました。

     「僕が終わったら、治療院も終わりでは済まないと思うんです」

     次世代の鍼灸師に託す未来を創る、佐藤先生の新たな10年が始まりました。

    ■「技術」や「サービス」の良し悪しではなく、「人」で評価される「鍼灸師」

     「次の時代を担う鍼灸師には、飛び越えなければならないものがある」と、佐藤先生は指摘します。

     まず、鍼灸師に求められる「能力」を佐藤先生は三つに分類しました。「鍼灸医療に対する技術」、「患者さんから診療費を頂くためのサービス業としてのサービス」、そして「人間としての能力」の三つです。

     その上で、「どんなに『技術』があっても、どんなに『サービス』が行き届いていても、どんなに『人間的』に優れていても、鍼灸師はやはりどこかで患者さんからの批評を受けることになります。良い先生というのは、この三つがうまく重なっているのです」と解説しました。

     続けて佐藤先生は、患者さんが持つ「見る目」についても語りました。

     「鍼灸氏を評価する『物差し』を持っていない患者さんには、実は『技術』や『サービス』の良し悪しがわからない場合が多いのです。

     その一方で、患者の皆さんが持っているのが『人を見る目』です。それは鍼灸師という『専門家を見る目』ではありませ。社会の中で人との係わり通して培われた『人を見る目』です。鍼灸師はこの目にかなわなければいけないのです」


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